元・金融OLの本棚

金融業界に返り咲きました。つれづれなるままに読んだ本について語る読書ブログ。

二重に差別されている女たち ないことにされているブラック・ウーマンのフェミニズム

『二重に差別されている女たち ないことにされているブラック・ウーマンのフェミニズム』ミッキ・ケンダル(川村 まゆみ 訳)

オススメ度 ★★☆☆☆

f:id:jigglejiggle:20211002153415p:plain

まず最初にお断りしておきたいのですが、ここでオススメ度を★2という低評価にしたのは9割翻訳のせいです。正直、まともに校正をしているのか疑うレベルです。本書のように時代性を反映するような話題を取り扱っている作品は、翻訳の時間もタイトになりがちなのかもしれませんが、最低でもきちんとフェミニズムとか人種差別について、きちんと知識があるorリサーチができる翻訳者を選定すべきと感じました。原書との読み比べはしていませんが、本書を読むなら原書(原題"Hood Feminism")で読む方が良さそうです。ちなみに、治部れんげ氏による日本版解説も、個人的にはやや的外れだと思っています。理由は後述します。

 

肝心の中身に関してですが、邦題からもわかるように「女性」と「黒人」といういわば二重の十字架を背負った女性たちがいかに困難を感じているか、それに対してコミュニティの外部・内部からどのようなアプローチが必要かについて、様々な角度から著者(シカゴの黒人コミュニティ出身)が意見を述べるものです。どちらかというと、「黒人」であることの十字架についての記述に重きが置かれている印象なので、いわゆる「フェミニズム」を想定して本書に入ると、やや肩透かしを食らったような印象を受けるかもしれませんが、日本にいる我々では知ることがあまりできない現代アメリカ社会の病巣のようなものが垣間みえます。そのあたりに興味がおありであれば、一読の価値アリです。

 

●現代アメリカにおいて「黒人女性」として生きるということ

続きを読む

モモ

『モモ』ミヒャエル・エンデ(大島 かおり 訳)

オススメ度 ★★★★★

f:id:jigglejiggle:20210920165027p:plain

小学生のころに図書館から借りて読んだのですが、大人になってもう一度読み直そうと思い、あらためて岩波少年文庫版を購入してみました。

舞台はヨーロッパ(イタリア?)らしきある都市。浮浪児のモモや、その友だちは、裕福ではないながらも心豊かな暮らしを送っていましたが、そこに「時間どろぼう」の男たちの魔の手がのびてきます。人々は時間を節約することに心をとらわれ、モモのまわりのみんなも変わっていってしまいます。モモは、昔のような暮らしを取り戻すために立ち上がります。

子どもが冒険小説として楽しむことができると同時に、大人にとっても改めて自分の生き方を問い直すきっかけをくれるような、そんな名作であり、それを余すところなく伝えてくれる名訳だと思います。

 

●時間とはただの数字か?

続きを読む

銃・病原菌・鉄

『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイアモンド(倉骨 彰 訳)

オススメ度 ★★★★☆f:id:jigglejiggle:20210912120750p:plain

いつもは小説について記事をあげているのですが、今回は少し趣向を変えて、ピューリツァー賞など数々の賞を受けた著作についてご紹介しようと思います。

この『銃・病原菌・鉄』では、「なぜ地域ごとに文明の発展の度合いに差が出たのか?」という謎に、科学的な証拠をつみ上げていくことで迫っていきます。

 

アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか?

続きを読む

イン・ザ・ハイツ

『イン・ザ・ハイツ』ジョン・M・チュウ 監督 / リン=マニュエル・ミランダ 原案

オススメ度 ★★★★★

f:id:jigglejiggle:20210909152708p:plain

読書ブログといいながら、先日観た映画が良かったので、ご紹介しようと思います。その名も『イン・ザ・ハイツ』。2005年に初演された同名ミュージカルの映画化です。

もともとリン=マニュエル・ミランダが手がけたミュージカル『アレクサンダー・ハミルトン』が大好きで、この映画が公開されたらぜひ観にいこうと思っていました。

続きを読む

変身

『変身』フランツ・カフカ(高橋 義孝 訳)

オススメ度 ★★★★★

f:id:jigglejiggle:20210902143640p:plain

前回の『存在の耐えられない軽さ』につづき、はからずもチェコ人作家による作品についての記事が連続してしまいました。

一般的には、ミラン・クンデラよりもカフカの方が有名ですね。不条理を描く作家として知られ、この『変身』は個人を襲う不条理を書いたとされます。世界的にも有名なカフカ、しかもその代表作とあれば読んでみなくては、とずっと思っていたので、今回はこちらを読んでみました。

続きを読む

存在の耐えられない軽さ

『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ(千野 栄一 訳)

オススメ度 ★★★☆☆

f:id:jigglejiggle:20210902145416p:plain

こちらも友人たちとの読書会のために読みました。

チェコの亡命作家ミラン・クンデラによる世界的ベストセラーとのことですが、恥ずかしながら、友人に紹介されるまで知りませんでした…。皆さんが読まれたことがありますか?

続きを読む

斜陽

『斜陽』太宰 治

オススメ度 ★★★★☆

f:id:jigglejiggle:20210902145731p:plain

実は大学生の頃にも一度読んでいた『斜陽』。

今回、友人と読書会をするにあたって、もう一度読んでみました。

最初に読んだときは、正直何も分からず、今回読み直すにあたってもまったく内容を覚えていなかったのですが、いま一度読み直すと違ったものが見えてきますね。

続きを読む