二重に差別されている女たち ないことにされているブラック・ウーマンのフェミニズム
『二重に差別されている女たち ないことにされているブラック・ウーマンのフェミニズム』ミッキ・ケンダル(川村 まゆみ 訳)
オススメ度 ★★☆☆☆
まず最初にお断りしておきたいのですが、ここでオススメ度を★2という低評価にしたのは9割翻訳のせいです。正直、まともに校正をしているのか疑うレベルです。本書のように時代性を反映するような話題を取り扱っている作品は、翻訳の時間もタイトになりがちなのかもしれませんが、最低でもきちんとフェミニズムとか人種差別について、きちんと知識があるorリサーチができる翻訳者を選定すべきと感じました。原書との読み比べはしていませんが、本書を読むなら原書(原題"Hood Feminism")で読む方が良さそうです。ちなみに、治部れんげ氏による日本版解説も、個人的にはやや的外れだと思っています。理由は後述します。
肝心の中身に関してですが、邦題からもわかるように「女性」と「黒人」といういわば二重の十字架を背負った女性たちがいかに困難を感じているか、それに対してコミュニティの外部・内部からどのようなアプローチが必要かについて、様々な角度から著者(シカゴの黒人コミュニティ出身)が意見を述べるものです。どちらかというと、「黒人」であることの十字架についての記述に重きが置かれている印象なので、いわゆる「フェミニズム」を想定して本書に入ると、やや肩透かしを食らったような印象を受けるかもしれませんが、日本にいる我々では知ることがあまりできない現代アメリカ社会の病巣のようなものが垣間みえます。そのあたりに興味がおありであれば、一読の価値アリです。
●現代アメリカにおいて「黒人女性」として生きるということ
続きを読むモモ
『モモ』ミヒャエル・エンデ(大島 かおり 訳)
オススメ度 ★★★★★
小学生のころに図書館から借りて読んだのですが、大人になってもう一度読み直そうと思い、あらためて岩波少年文庫版を購入してみました。
舞台はヨーロッパ(イタリア?)らしきある都市。浮浪児のモモや、その友だちは、裕福ではないながらも心豊かな暮らしを送っていましたが、そこに「時間どろぼう」の男たちの魔の手がのびてきます。人々は時間を節約することに心をとらわれ、モモのまわりのみんなも変わっていってしまいます。モモは、昔のような暮らしを取り戻すために立ち上がります。
子どもが冒険小説として楽しむことができると同時に、大人にとっても改めて自分の生き方を問い直すきっかけをくれるような、そんな名作であり、それを余すところなく伝えてくれる名訳だと思います。
●時間とはただの数字か?