元・金融OLの本棚

金融業界に返り咲きました。つれづれなるままに読んだ本について語る読書ブログ。

オー!ファーザー

『オー!ファーザー』伊坂 幸太郎

オススメ度 ★★★★★

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伊坂作品ってすごい好きなんですよね。

今まで出版されている著作をすべて読んでいるわけではないんですが、家にあるだけでも10冊は軽く超えるくらい。

私の場合、各作家の代表作を読むことが多くて、ひとりの作家の著作をいくつも読むっていうのはあまりないのですが、伊坂さんは別。

じゃあ、なんでそんなに伊坂作品が好きなのかというと、理由は大きく2つあると思うんです。

まずひとつには、鮮やかな伏線回収。伊坂作品を読んだことのある方ならお分かりだと思うんですけど、「え、この話がここにつながるの!?」みたいに大小いくつもの伏線が、物語の終盤に向かってひとつの点に収束していくその感じがたまらない。読んだ後、ミントタブレットを噛んだときみたいな清涼感があるんですよね~。

もうひとつは、登場人物が魅力的だということ。小説である限りは、しかも伊坂作品のように作りこまれたストーリーの中を動く人物である限りは、どの人物も「舞台装置」として果たさなければならない役割があるわけですが、いかにも「はい、わたしはこの物語でこの役割を果たすので、いまここでこういう言動しました~」みたいなのがないんですよね。まあ「こんなやつ現実にいるかよ」みたいな人物もいるにはいるんですが、それぞれの人物の性格とか特殊能力?みたいなものがすごく自然で、わざとらしさがないんですよ。あくまでもストーリーを邪魔せず、でもそれぞれの登場人物が自分の持ち味を最大に発揮する、みたいなのがすごくうまいなぁと思います。

 

で、本題。

今回読んだ『オー!ファーザー』もこの2つの持ち味が最大限に味わえる

 

いかにもミステリー、みたいな血なまぐさい事件は(あまり)起きないけど、最後の30ページあたりの怒涛の伏線の回収はお見事。

よっ、お家芸

今回の主人公は、どこにでもいる高校生の由紀夫くん。

彼が、まわりの高校生と違うところは、父親が4人いること(!?)

また、この4人が4人とも性格が違っていて、4人それぞれに得意なジャンルがあるんです。

悟:冷静沈着。大学に勤務をしていて、超物知り。

勲:マッチョ。中学の体育教師で、物語のなかでもフィジカル担当。

葵:イケメン。元ホストで、いまはバーを経営。女の子大好き。

鷹:ギャンブラー。たぶん無職。ザ・どうしようもない男とキャラ。

この4人のお父さんたち(!?)に由紀夫の友達の多恵子や鱒二が加わって、それぞれの性格とか特技(?)をいかんなく発揮していくわけです。

 

どんな活躍をするかは読んでからのお楽しみ。

(こういう作品は、多くを語らないで作品を読んでもらうのが一番ですよね?)

 

いわゆる代表作ではないかもしれませんが、存分に伊坂ワールドを堪能できること間違いなし!