元・金融OLの本棚

金融業界に返り咲きました。つれづれなるままに読んだ本について語る読書ブログ。

失われた時を求めて スワン家のほうへⅠ

失われた時を求めて スワン家のほうへⅠ』マルセル・プルースト(吉川 一義 訳)

オススメ度 ★★★☆☆

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ここのところ忙しく、だいぶブログの更新をサボってしまっていました…。前回の記事から何冊か読了している本はあるので、ゆっくり更新を再開していこうと思います。

久しぶりの更新は、フランス文学の金字塔との呼び声も高い『失われた時を求めて』です。全13巻(!?)からなる本作の第1作目ですね。先は長い…。

1巻である『スワン家のほうへⅠ』はこの長編のプロローグで、主に主人公の幼少期が晩年の回想という形で語られます。ちなみに、13巻のラストは主人公が小説の執筆を決意するシーンで、その小説こそが『失われた時を求めて』であるという円環構造になっています。

 

ところでこの小説、「何か面白い本が読みたい!」という方にはまったくオススメできません。なぜなら、この物語には筋というものがなく、いわゆるドキドキ・ワクワクを提供してくれる小説ではないからです(1巻のプロローグ部分は特にそうなのかもしれません)。主人公が眠れぬ夜に回想した過去がとりとめもなく、まるで夢を見ているかのように連なって記述されていきます(文学者に「夢の論理」と指摘されていますね)。人それぞれに印象深い場面や共感できる箇所はあると思いますが、物語の筋があるわけではないので、私なんて読んだそばから「あれ、さっき何を読んだっけ?」とページを戻るみたいな作業を繰り返していました…。

正直、読み終わったいまも「何が書かれていたか?」と聞かれれば、「人生において晩年を迎えた男がベッドの上で昔のことを一晩中思い出していた」といしか答えられません笑 輪郭が捉えられそうで捉えられず、それでいてくっきりとした心象を残していくこの感じは、印象派の絵に近いものがあります。

 

事実、この『失われた時を求めて』を読了したあとには、見たことがあるはずのない(けれどテレビや何かの写真で見た印象に影響されていると思われる)風景がしっかりと脳内に刻まれていることを感じます。暗い部屋にジュヌヴィエーヴ・ド・ブラバンとゴロの影絵を映し出す幻灯、コンブレーの牧歌的な田園風景、夕焼け空にと黒々と屹立する教会の尖塔…。そんな風景の数々が「紅茶に浸したマドレーヌが口蓋にふれた」ときのように、あるときふと立ち上ってくれば、十分にこのフランス文学の楽しんだことになるのかもしれません。

 

来年には13巻まですべて読み通せればなぁ、と思っています!

「今年こそは世界的名作を読んでみよう」「フランス文学は難しいイメージがあるけれどいつか読んでみたい」という方は、一緒に挑戦してみましょう!笑

私は岩波文庫で読んでいますが、いろいろな訳が出ているので、自分のお気に入りの訳を探すのも面白いかもしれませんね。